表題2 【自動車 での 無線 通信】 DSRC と V2X の 共存 について 

自動車の無線通信の代表例として DSRC と V2X の特徴をテーマに5つのQ&A形式で解説します。

 


質問2.1  DSRC と V2X ( C-V2X )が共存している形となる場合の課題には何があるか。


回答2.1 ネットワークの汎用化、システム親和性が課題である
基本的に目的が異なるため、共存するためには 無線システム のゲートウエイと専用の ヘテロジニアスネットワーク 構築が課題と言える。
なぜなら、 DSRC と C-V2X の通信方式及びネットワークは異なる。DSRCが独自の通信システム(ETC、5.8GHzのISMバンド)に対して C-V2X はモバイル 5G 通信システムを基本としたネットワークになる。
例えば、モバイル 5G はスマホなどで使われるLTEの後継に位置づけられ、汎用性が高い無線システムである。オートモーティブとは別の無線システムとして存在しその一環が提供される。
そのため、無線システムとしての、ネットワークの汎用化、無線機、制御器のシステム親和性が共存するための課題となる。

 


質問2.2  DSRC を C-V2X への マイグレーション を行う場合、どれぐらいの期間が必要となるか。(マイグレーション:移行期間)


回答2.2 およそ2年は必要と想定する
DSRC は既に存在している通信システムである。これを全てモバイル 5G システムに入れ換えることを考えると、ほぼ2年は必要であると思われる。
なぜなら、以下の理由があるためである。
①現在、日本では現状 5G 通信規格での3大要件で eMBB (高速大容量通信)が実用化されてきている。
② 5G 通信で重要な点は、 C-V2X の分野で必要な URLLC (低遅延)と mMTC (同時多接続)が実現できないと 5G の目的を達成できない。
③ 5G の目的が達成されて初めて C-V2X が実現できると言っても過言では無い。
例えば、URLLCには、 5G 通信網の中でエッジコンピューティングという技術により、広いネットワークでなく、割と狭いネットワークでのAI制御が必要になるため、これらの通信設備・システム装置の整備が重要になる。
従って、設備の開発と導入、実証実験を経て整備化する必要があることを考えると、開発に1年、整備化に1年として、少なく見積もっても2年は必要になると思われる。

 


質問2.3  DSRC と C-V2X が共存している形となる場合、 DSRC と C-V2X で周波数は分けるのか。


回答2.3 日本の電波法のため、基本的に周波数を分ける必要がある。
海外ではどうなるかは不明だが、日本の電波法を考えると、基本的には現時点では周波数を分ける必要がある。また、既得権益がある場合、周波数を分けると考える方が自然である。
なぜなら、海外動向も含め、周波数の効率化が総務省で検討されると考えた場合は、用途に使用する電波を統一化する可能性があるが一朝一夕には考えにくいと思わる。また、汎用化の優位性や利点及び不都合が無ければその方向には向かわないと考えられる。
例えば、モバイル5Gが全てのIoT等に使われると想定されているが、特定の業界である自動車に専用的に使われるとは考えにくいと思われる。
従って、周波数を分けると考える方が、現状では無難であると考えられる。

 


質問1.4   DSRC が V2X の一つとして組み込まれた場合の利点は何か



回答1.4  DSRCシステム で開発した資源の有効利用
DSRC の統制機器は通信機能とは別に使用することができるため開発資源は転用することが可能である。
なぜなら、 DSRC 自体は ITSシステム の一つとして、道路上での自動車との通信を行う ETC に利用されているものであり路車間通信である。 DSRC の特徴は、自動車の運転者情報を伝えるものである。 V2X として自動車が自動で情報を判断することになれば、自動運転や運転補助を自動車自体が自律的に行うことができる。使用する周波数は別にして、通信機能そのものは V2X に展開可能である。
例えば、新たに通信機能やシステムを構築することなく、路車間通信が可能であることを考えれば、有効活用することは容易に想像できる。ここでAI制御を加えることで DSRC の機能は V2X で発揮される。
従って、 DSRCシステム を改良するという観点で開発資源は有効利用が可能である。

 


質問1.5  DSRC は今後どうなるのか


回答1.5 いずれ何らかの通信システムに統合されると思われる
一番有力な通信システムは モバイル5G への統合である。そうなると V2X として 5G に集約される可能性が高い。
なぜなら、 DSRC は ETC のために開発されたという経緯がある。 ETC は自動課金することが可能であるが、それだけに使用するには周波数の有効利用としては物足りない。今後モバイル 5G は V2X により自動運転や運転補助に利用されることから DSRC は置き換わっていく可能性が高い。
例えば、 IP通信 はパソコンでインターネットにつながるための通信規格である。しかし最近では、電話でも IP通信 による IP電話 として使えるようになっている。つまり、電話だけのネットワーク回線だけでなく、IP通信のネットワークは電話という機能にも使われ始めている。今や様々なネットワークが当初の目的とは別に色々なものに派生していくというものになっている。
従って、 DSRC が ETC だけという時期から更に進化してモバイル 5G への統合、更にはその先のネットワーク技術に置き換わって行くと考えられる。

 

 

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