【IoT 機器 LPWA 無線 の 通信トラブル の原因とは?】

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IoT 機器 LPWA 無線 の 通信トラブル の原因とは?
~ 電波干渉 ではなく 電源ノイズだった 事例 ~

IoTが「つながらない」原因はここにある
LPWA通信の落とし穴と対策

 

本記事は、ちまたでよく耳にするコトバ、キーワードなどを筆者の経験事例を踏まえた見解を記述するものです。

 

【IoT 機器 LPWA 無線 の 通信トラブル の原因とは?】

身近な無線通信にはスマートフォンやWi-Fiがあります。さらに近年はIoT機器やセンサー機器にもLPWAや各種無線通信モジュールが組み込まれるようになり、IoT通信の利用が急速に拡大しています。無線技術は大きく進化し、市販されているLPWA無線モジュールは高い信頼性を持っています。そのため、多くの技術者は「組み込めば安定して通信できる」と考えがちです。

しかし、実際の現場では「IoT通信が途切れる」「LPWAが不安定になる」といった原因不明のトラブルが今でも発生します。しかも、電波環境を調べても異常が見つからないケースが少なくありません。

本記事では、一般的な無線トラブルの常識では見落としがちな“盲点”について、筆者が実際に現場で経験した具体的な事例をもとにLPWA通信トラブルを解析した結果を分かりやすく解説します。

 

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 IoT無線に関する一般論 ~ IoTが不安定になる典型的な原因


「実績のある市販のLPWA通信モジュールを使っているのだから、通信が安定していて当然だ」
回路設計やシステム開発に携わる技術者の方であれば、きっと誰もがそう信じて疑わないでしょう。

IoT機器が「つながらない」「途切れる」といったトラブルは、現場で非常に多く発生します。特にLPWA通信は電波に強いはずなのに不安定になるケースがあり、その原因が電波ではなく「電源ノイズ」にあることも珍しくありません。

近年、あらゆる機器のIoT化が叫ばれる中で、信頼性の高い無線モジュールを選んで組み込めば、手軽に安定した無線環境が手に入る時代になりました。カタログのスペックシートを眺め、「よし、これなら大丈夫だ」と設計を進める。これは、現在の開発現場におけるごく一般的な、そして一見すると何も間違っていないアプローチです。

図1 IoTモジュールの例

 


 トラブルの内容 ~ 実例をもとに


しかし、いざ装置を組み上げ、フィールドテストや実客先での運用を始めた途端、牙をむくのが「原因不明の通信障害・通信エラー」という現象です。

昨日までは何の問題もなく動いていたのに、なぜか時々、前触れもなく通信断や通信エラーが発生してしまう。再現性を取ろうとしても、発生するタイミングはバラバラで一向に掴めない。

そんな時、私たちはまず何を疑うでしょうか。
おそらく多くの方が、「やはり現場の電波干渉や電波環境の問題か?」と考え、周囲の電波を測定してみると思います。ですが、いくら調べても怪しい電波源は見当たらない。

手詰まりになり、藁にもすがる思いでモジュールメーカーに問い合わせてみても、返ってくるのは「現地の電波環境の影響ではないでしょうか」という、マニュアル通りの紋切り型の回答だけだったりします。

ユニットは正常、電波環境も白。なのに、目の前の無線は繋がらない――。
「もう、一体どこを調べればいいんだ……」と、暗闇の中で孤立無援のまま、途方に暮れてしまう。今まさに、そんな絶望的なバグに直面し、手詰まりになって困っている方はいらっしゃいませんか?

実は、一般的な「無線通信トラブル=電波干渉・通信障害」という固定観念に縛られている限り、この通信障害・通信エラーの迷宮から抜け出すことはできません。どれだけ調べても原因が見えないその瞬間こそ、一般的な考え方から離れ、全く別の観点からのアプローチが必要になっている証拠なのです。

図2 IoT無線がつうじない

 


 結論 ~ 解決方法の事例


空中を飛び交う電波の干渉を探しても、通信障害の原因は見つかりません。
なぜなら、その通信を発生させている本当の原因は、外部の電波環境ではなく、装置に供給されているAC電源のノイズ、つまり「電源ラインから侵入する電源ノイズ」という、灯台下暗しの盲点にあるからです。

「無線のトラブルなのに、電波ではなく電源?」と、耳を疑う方も多いと思います。

しかし、この「まさか」という部分にこそ、設計者が陥りがちな意外な落とし穴が隠されています。なぜ電波に強いはずのLPWAが、電源ノイズ一発で沈んでしまうのか。そのブラックボックスの裏側に隠された構造上の弱点と、謎解きのプロセスについて、私自身の経験事例を踏まえた見解を交えながら、具体的に解説していきたいと思います。

 


 トラブルの要因 ~つながらない時にまず疑うポイント


無線ユニットが周囲の電波環境によって通信障害を起こしているのではないとすれば、その要因を特定する必要があります。ここでは、社内設備や実験室における検証と消去法によるプロセスについて解説します。

 


 電波干渉による通信障害の検証


まず、一般的に真っ先に疑われる「空間からの電波干渉」について検証を行いました。

対象となる無線ユニットに対して、外部から意図的に強力な電波ノイズを注入した通信の挙動を確認する再現実験です。仮に現場で未知の妨害電波が発生しているならば、この実験によって同様の通信途絶が再現されることになります。

しかし、実験の結果、無線ユニットは通信している信号レベルとほとんど同じ電波ノイズでなければ誤動作を起こさず、安定して通信を継続しました。

このLPWA通信モジュールは、比較的低速度でデータを伝送するシステムであり、通信方式には「低速FSK」が採用されています。この方式は、信号対雑音比(S/N比 ザックリ数dB)が極めて低い過酷な環境であっても、信号を検出できる高い堅牢性を備えているのが特徴です。

図3 妨害波のイメージ

 

したがって、現実的な運用環境において、この通信を完全に遮断するほどの猛烈な電波が空間を飛び交っている可能性は極めて低いと判断でき、電波干渉の線は完全に消去されました。

 


 無線モジュール内部構造の問題 ~ 見落としがちなポイント


電波環境に問題がないとなれば、無線ユニットそのものの内部構造を疑う必要があります。しかし、ここで問題となるのが市販モジュールの「ブラックボックス化」です。

高度にモジュール化された無線ユニットは、内部の回路構成や搭載されているLSIの仕様が非開示となっているケースがほとんどです。メーカーへの問い合わせを行っても、技術的な詳細仕様を得ることは困難であり、開示されるのはマニュアル通りの一般的な回答に留まります。

内部仕様が不明である以上、外部から観測できる挙動と特性から、内部で起きている現象を論理的に推測(プロファイリング)していくアプローチが必要となります。

 


 LPWAモジュールの内部構造と弱点


モジュールの周辺挙動を詳細に解析した結果、当該装置は920MHz帯の受信信号からベースバンド(信号処理を行う低周波領域)へと周波数変換を行う構造であることが判明しました。このLPWAモジュールは、様々なメーカでIC化されていることを考えると、ほぼ同じ構造となっている推測です。信頼性のあるメーカの代表的な類似の部品を参考にしました。

https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/datasheet/module/power_module/specified_low_power/bp35c0-j.pdf

(注:例示した部品はトラブルを起こしていません。逆に内部を公開しているために設計側から見ると非常に使いやすいものと言えます。)

図4 IoTモジュールの内部構造

この周波数変換において、中心的な役割を担っているのが「PLL(位相同期回路)」です。

高周波回路におけるPLLの特性として、空間からアンテナを介して飛び込んでくる電波ノイズに対しては高い耐性を持つ一方で、「電源ラインから重畳(ちょうじょう)するノイズ」に対しては極めて脆弱であるという構造上の弱点があります。すなわち、空中は正常であっても、電源電圧がわずかに揺らぐだけで、PLLのロックが外れ、通信エラーを引き起こすというメカニズムです。

図5 PLL回路の動作とふらつき

この構造上の特性を特定したことにより、「通信障害の原因は電源ラインのノイズである」という確実な仮説が立ちました。

 


 電源ノイズによる通信障害の再現実験


立てた仮説を証明するため、無線通信での妨害電波注入は行わず、電源ラインに対してのみ意図的にノイズを注入する再現実験を行いました。

結果は顕著であり、それまで電波ノイズに対して高い堅牢性を示していた無線ユニットが、電源の揺らぎによって即座に通信エラーを起こし、現場と同様の通信途絶現象が再現されました。

図6 ノイズ混入のイメージ

次に、この電源ノイズがどのような経路でPLLに影響を与えていたのか、基板の配線レイアウトおよび周辺回路の精査を行いました。

検証のため、個別に用意した「DCノイズ印可治具」を使用し、さらに現場の金属きょう体による影響を模擬するため金属板を用いた空間結合のノイズ放射実験を試みました。その結果、基板内の近接する配線間において、電源ラインのノイズが空間(浮遊容量や相互インダクタンス)を介して、PLLの制御ラインへと結合(ジャンプ)している挙動が明確に証明されました。

周囲の電波環境をどれだけ測定しても原因が検知できなかったのは、ノイズの侵入経路が「基板内部の局所的な結合」であったためです。

 


 まとめ


今回の事例は、特定の無線ユニットの品質に起因するものではなく、高性能なモジュールを自社装置に組み込む際に共通して発生し得る設計上の盲点と言えます。

どれだけ通信モジュール単体の無線性能が優秀であっても、それを受け入れるホスト側(基板全体)のAC電源ラインおよびDC電源ラインに対して、適切なEMC対策用ノイズフィルターが機能していなければ、システム全体の安定性は確保できません。

 

図7 ノイズ回避のイメージ

ここで極めて重要なのは、「アース(グランド)のインピーダンスを十分に低くし、電位を安定させなければ、いかなるノイズフィルターも本来の性能を発揮しない」という鉄則です。

(ノイズフィルタの効果的な配置は、別のブログを参照してみてください)

【 無線機 の 電源 に 発動発電機 を使ったら、 無線機 使用不可能?】

ノイズフィルタについてのブログ

ノイズの逃げ道となるアースという土台が強固に設計されて初めて、フィルターによる減衰効果が得られます。この基本を欠いたままモジュールの仕様のみを疑うのは、建物の基礎が不安定な状態で上物の防音性能を議論しているようなものです。

「無線通信の不具合であっても、空間(電波)ばかりに目を奪われず、まずは足元(電源とアース)の設計を疑う」

このアプローチは、原因不明の手詰まりとなったバグを解決するための極めて有効な視点となります。
実際の現場では、通信障害が発生すると、多くの開発者はまず電波環境を疑います。
しかし、原因不明のトラブルほど、「みんなが見ている場所」には原因がありません。
今回も、電波環境、無線モジュール、ソフトウェアを順番に切り分け、最後に電源系統へたどり着いたことで原因を特定できました。
無線トラブルは無線だけを見ても解決しないケースがあります。

私はこれまで、電源、アース、EMC、高周波回路、アンテナ、ソフトウェアを含めて総合的に解析することで、原因不明とされたトラブルを解決してきました。
もし同様の現象でお困りであれば、一度別の視点から見直してみることをお勧めします。

 

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